結論:完璧な資料より「自分がもう一度たどれる記録」から
前任者が辞めてしまった、引き継ぎ資料が数枚のメモしか残っていない——そんな状態でマーケや運用の仕事を引き継ぐと、まず「何が分からないのかが分からない」ところから始まります。ここできれいなマニュアルを作ろうとすると、手が止まりがちです。最初に目指すのは、完成された引き継ぎ書ではなく、自分がもう一度同じ作業をたどれる記録です。
この記事では、引き継ぎ資料が十分に残っていない状況で、担当者が自分で資料を作り直していく手順を、①分かっていないことの洗い出し→②最低限そろえる項目→③更新し続ける仕組み、の順で整理します。特別なツールがなくても、メモや表計算ソフトの範囲で始められる内容です。
ステップ1:「分かっていないこと」を先に書き出す
資料づくりというと、知っていることをまとめる作業だと思われがちですが、引き継ぎが不十分なときは逆から入るほうが進みやすいことがあります。つまり、分かっていないこと・触ったことがないもの・誰に聞けばいいか不明なものを、先に一覧にします。
たとえば次のような観点で書き出していきます。
- ログイン・アクセス:どのツールのアカウントがあり、そのうちどれにログインできて、どれが不明か。
- 定期的に動いているもの:毎月のレポート、定例投稿、自動で回っている処理など、止めてはいけないのに手順が分からないもの。
- 連絡先・関係者:外部の代理店や制作会社、社内の承認者など、誰が何を担当しているか不明な相手。
この「分からないことリスト」が、そのまま調べる順番になります。全部を一度に解決しようとせず、業務が止まって困る度合いが高いものから埋めていくと、優先順位に迷いにくくなります。
ステップ2:最低限そろえておきたい項目をそろえる
引き継ぎ資料に決まった形はありませんが、後から自分や別の人が困りやすいのは、たいてい同じような箇所です。まずは次の項目がそろっているかを目安にすると、抜けに気づきやすくなります。
- 使っているツールと、その用途:何のために使っているか、どこにデータがあるか。
- 定例作業の手順:毎月・毎週やることを、順番と締め切りの目安つきで。
- 数字の置き場所:アクセス数、広告費、問い合わせ件数などが、どこを見れば分かるか。
- 過去の経緯:なぜ今のやり方になっているか、分かる範囲で。理由が分かると、変えていいところの判断がしやすくなります。
ここで大事なのは、最初から完璧に埋めようとしないことです。分からない項目は「未確認」とだけ書いて空けておき、判明したら足していきます。空欄が残っていても、「ここはまだ分かっていない」という情報自体が、次に引き継ぐ人にとって役立ちます。
ステップ3:作業しながら記録を残す仕組みにする
引き継ぎ資料を別途まとめる時間をわざわざ取ろうとすると、日々の業務に押されて後回しになりがちです。そこで、実際に作業したその場で記録を足していく形にすると、無理なく続けやすくなります。
たとえば、月次レポートを作ったときに「どのファイルから、どの数字を、どういう手順で出したか」を数行メモしておく。ツールの設定を触ったら、変更した箇所と日付を残しておく。こうして作業の記録が積み重なると、それがそのまま手順書に近づいていきます。きれいにまとめ直すのは、ある程度たまってからで十分です。
一人で抱え込まないための考え方
引き継ぎが不十分な状態を自分だけで背負おうとすると、調べる範囲が広すぎて手が止まってしまうことがあります。分からないことリストのうち、社内の別の人や、外部の取引先に聞けば早く分かるものは、遠慮なく聞いてしまうほうが結果的に早いことも多いです。「前任者しか分からない」状態を、「聞けば複数人が分かる」状態に少しずつ移していくイメージです。
私たちが引き継ぎの立て直しをお手伝いする場合も、いきなり整ったマニュアルを作るのではなく、まず何が分かっていないかを一緒に洗い出し、業務が止まらないところから記録を残していく進め方を意識しています。作った記録が特定の人の頭の中だけに戻らないようにしておくことが、次に担当が変わるときの負担を軽くする土台になります。
まとめ
引き継ぎ資料が十分に残っていないときは、完璧なマニュアルを目指すより、自分がもう一度たどれる記録を作ることから始めると進みやすくなります。手順は、①分かっていないことを先に書き出す→②ツール・定例作業・数字の置き場所・経緯といった最低限の項目をそろえる→③作業しながら記録を足していく、の順です。空欄は「未確認」と明記して先に形にし、後から埋めていけば構いません。そして、その記録を一人の頭の中だけに戻さないようにしておくと、次に引き継ぐときの負担が軽くなります。
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