チラシもバナーもSNSの画像も、ここ数年はほとんどCanvaで作ってきました。テンプレートを選んで文字を差し替えれば、それなりに見られるものが短時間で出来上がる。困ったことは特にない——そう思っていたのに、いざ印刷会社にデータを渡す段になって、急に話が通じなくなりました。「Illustratorのデータでいただけますか」「塗り足しはついていますか」。返事に詰まって、自分だけ取り残された気分になったのを覚えています。同じように、Canvaで完結してきて印刷のやり取りで壁を感じた方に向けて書きます。
先に、いまの私の答えを書いておきます。Canvaしか使えないこと自体は、引け目に感じなくて大丈夫です。つまずいたのはツールの問題ではなく、印刷という工程が何を求めているかを知らなかっただけでした。そこを少し知ると、Illustratorを覚えなくても、やり取りはかなり楽になります。その話をします。
「話が通じない」の正体は、たいてい前提の違い
印刷会社の人が意地悪を言っているわけではありません。あちらはあちらで、きれいに刷るために必要な条件があって、それを満たしたデータがほしいだけです。画面で見る色と紙に刷る色の仕組みが違ったり、断裁のときに端が白く出ないよう少しだけ大きめに作る必要があったり——そういう「印刷側の当たり前」が、こちらには見えていない。だから話が噛み合わないように感じます。
私が戸惑ったのも、まさにここでした。Canvaの中では完結していたのに、外に渡した瞬間、知らない前提がいくつも出てきた。でも一つずつ聞いてみると、どれも「なるほど、そういう事情か」で済む話ばかりでした。
覚えるのは新しいツールではなく、少しの「事情」
ここで「じゃあIllustratorを勉強しなきゃ」と身構える必要は、たぶんありません。もちろん扱えるに越したことはないけれど、多くの場合、必要なのは新しいソフトを一から覚えることではなく、印刷側が何を気にしているかを少しだけ知っておくことです。
実際にやったのは、大げさなことではありません。印刷会社から言われた言葉を、その場で「それはどういう意味ですか」と聞く。あるいは後でAIに「印刷会社に塗り足しと言われたけど、Canvaだとどう対応すればいいか」と聞いてみる。そうやって、つまずいた一つ分だけ知っていく。全部を先に勉強するのではなく、必要になった順に、必要な範囲だけです。
ツールの数より、渡す相手を想像できるか
振り返ると、私に足りなかったのは操作できるソフトの数ではなく、データを受け取る相手が何に困るかを想像する材料でした。印刷する人が何を見て、何を確認しているか。それがぼんやり分かるだけで、同じCanvaのデータでも、渡し方や添える一言が変わります。「このデータでいけますか、無理なら形式を合わせます」と一言添えられるだけで、やり取りはずいぶん穏やかになりました。
これはたぶん、印刷に限った話ではありません。Web制作でも動画でも、自分の慣れたツールの外に出て誰かに渡すときは、いつも同じことが起きます。相手の事情を少し知っておくと、道具が一つしか使えなくても、案外なんとかなる。逆に道具をいくつ持っていても、相手の事情を想像できないと噛み合わない。そんなふうに感じています。
まとめ
Canvaしか使えないことを、引け目に感じる必要はないと思います。印刷のやり取りでつまずくのは、ツールが足りないからではなく、印刷側の前提を知らないだけのことが多いからです。だからといって新しいソフトを一から覚え直さなくても、「塗り足し」「入稿データ」といった言葉の意味を、つまずいた順に少しずつ知っていけば十分です。大事なのは、使える道具の数より、データを渡す相手が何に困るかを少し想像できること。私自身、そう考えるようになってから、印刷会社とのやり取りがだいぶ気楽になりました。
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